『嫌われる勇気』って結局どんな話なの?

サラリーマン処世術

自己啓発の父と言われるアルフレッドアドラーが提唱した”アドラー心理学”について分かりやすくまとめた本です。本書の結論は、「悩みはすべて人間関係であり、それを解決するには承認欲求は捨てるべき」ということです。

アドラー心理学の考え方における大事なポイントは、以下の3つ。
 ・原因論の否定、すべては目的論
 ・課題の分離
 ・タテの関係を作らない

①原因論の否定、すべては目的論

人の行動は原因はなくて目的だけという理論です。原因があるから行動しているのではなく、目的があるから行動しているということ。

ん、どゆこと?

例えば、若手サラリーマンが部長から怒鳴られているのを想像してください。
なんで怒られているんでしょうか?若手が仕事でミスった?何かへまをしちゃったから?

違うんです。

部長が怒鳴っているのは部下のミスという原因があるのではなく、目的があるからなんです。怒鳴ることにより、若手が自分に歯向かってこないようにしたいとか、上下関係を見せつけたいという部長の目的があるのです。
これがアドラーの目的論です。

同じようなミスでも人によっては対応が変わりますよね。
冷静に注意して終わる場合もあるし、改善できる良いタイミングとして前向きに捉えてミスの原因を分析、再発防止策を検討して次は起きない仕組みにしようと淡々と取り組む場合など色々な対応があります。
めっちゃ怒鳴る人にはその人なりの目的があるからなのです。

もう一つの例は、「両親が離婚しているから自分は幸せになれないんだ」という思い込み。
今の自分にはまったっく関係ありません。
自分が今夫婦仲が悪いのは両親の離婚のせいでもなんでもありません。両親を言い訳にしているだけ。
幸せな結婚生活を送りたいなら今の夫婦の関係性を大事にすればいいんです。

また、「自分は赤面症なので好きな相手に告白できません」というのも飛んだ思い込みです。
赤面症を理由にしているだけなんです。本当は告白して断られることを恐れて自分が傷つきたくないから赤面症のせいにしているということです。

挑戦しないことを無意識に他のせいにしている。今のままが楽だから過去のせいにしている、というだけなんです。

原因、暗い過去に縛られないということが大事。
過去を言い訳にせず、チャレンジして今これから楽しい人生を送ろうという考え方です。

②課題の分離

「自分の課題と他人の課題を分離しましょう」という考え方です。
すなわち、自分がコントロールできるものは一生懸命頑張り、自分がどうにもできないことは考えないようにしましょうということです。

有名なことわざに
「馬を水辺に連れて行くことはできるが水を飲ませることはできない」
というものがあります。

自分の課題は馬を連れて行くまで。飲むかどうかは馬次第。これが他人の課題です。

悩みが多い人は、自分の課題も他人の課題もすべてひっくるめて考えていることが多々あります。課題の分離が理解して、自分の課題だけを全力で取り組めばいいんです。

例えば、サラリーマンの例として営業マンがめっちゃ頑張っているのに評価されないと悩んでいるとします。
自分の課題は営業で成績を残すことです。とにかく成果を残す、上司の期待に応える、ということをやりきるだけ。

一方、自分のことを評価するのは上司の課題なんです。この部分は考えても意味がない。もし仮に悪い評価を受けてしまったのであれば自分の課題をまた探すだけ。あまりに不当な扱いを受けるなら、異動希望を出す、転職を考える、であって、間違っても上司の考えをあらためさせようとか、どうしたらいい人になるかなどと思ってはいけません。
これはあくまで他人の課題です。

課題の分離とはすなわち承認欲求を捨てることにつながります。
人は承認欲求の奴隷になります。

なぜ大学に行くのですか?
この勉強がしたいから、この分野を学びたいから、という理由ではない人もきっとたくさんいますよね。
人からスゴイと言われたいので知名度の高い大学を選ぶとか偏差値の高さで選んでしまうようなことはありませんか?で、そのまま大企業に勤める。
そして誰かに褒められたいがために仕事をする。

これは他人の課題に動かされているにほかなりません。

しかしこれはこれで無理もないことなんです。
承認欲求を刺激して頑張らせるというのが日本の教育の仕組みになっていることが多く、これまでどっぷり浸かってきた我々が急に意識を転換するのは困難です。

「他人に認められるために注力する」のではなく「自分が何を幸せと感じるのか」が大切です。

③タテの関係を作らない

上下関係を作らず対等な存在であるべきだという考え方です。
そのためには人を褒めてはならないということです。

褒めると自然に上下の関係が生み出されます。褒める側が上、褒められる側が下という関係です。これにより自然と承認欲求を刺激してしまいます。褒めて伸ばす上司はアドラーから言わせるとNGということになります。

ではどうしたら良いか?

褒めるのではなく感謝するようにしてください。感謝は上下関係を生み出しません。
ただし、決して人から感謝されたいとは思わないこと。
相手が感謝するかは相手の課題です。
自分で精一杯やれることだけはやって、あとは自己満足でOK。

一旦まとめ

  • 原因論ではなくすべてが目的論
    →過去のトラウマは言い訳です。
  • 課題の分離
    →自分の課題だけに注力しよう。
  • タテの関係は作らない
    →褒めるのは承認欲求の奴隷を作ります。代わりに感謝しよう。

果たしてアドラーを全面的に支持してよい?

絶対に過去に縛られないとか絶対に褒めないというのはリアルに生きにくいと感じます。
自分たちはこれまで褒められるが正として育ってきましたし、誰しも褒められたいという感情は持っています。

それに全然褒められなかったら寂しい気もしますし、場合によっては褒める、褒められるがあっても良いのではと考えます。アドラーに完全に従うとか、がんじがらめになるという必要はなくてあくまで自分のハッピーが大切。アドラー心理学を分かった上で、褒められたことは素直に喜ぶというのが幸せな生き方なのではないでしょうか。

最後にもう一つ

「褒める」と「感謝」は状況に応じて使い分けようという意見です。

自分の子供を育てるときは、アドラー心理学の通りなんでもかんでも褒めて育てるは良くないと考えます。親の期待を背負いすぎてプレッシャーになったり、無意味に高いプライドにつながったりとまさに承認欲求の奴隷になりかねません。

子供に対しては、あなたはスゴイと褒めちぎるのではなく、時には感謝につなげてみましょう。
しっかり教科書を音読できた。そのおかげで頭の中で情景がイメージできた分かりやすく伝わってよく理解できた。ということで「ありがとう」。
また親にも分からないことを子供が自ら学んで教えてくれた。素直に勉強になった、「ありがとう」。みたいないイメージです。

一方、企業活動ではどうか?
褒めてやる気を出させて短期的な成果を上げるということも場合によっては必要と考えます。
褒めるというのは短期的なモチベーションには特効薬にもなります。
それによって意識が向上し、チームも団結する。その結果、成果にもつながる。
これによって承認欲求の奴隷をまた生み出してしまうことになる恐れもありますが、どのような良い薬も副作用があるものです。

「褒める」と「感謝」の使い分け、効果と副作用を理解した上で活用することをおススメします。


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